今日は珍しいことに車に乗っている。
助手席に俺。
運転席には和希。
ハンドルを握る和希は当たり前だけど大人で、クラスメートの遠藤和希ではない。
切ない。
淋しい。
「……」
でも。
同時に。
「………」
カッコイイなって見とれてしまう。
恋人として隣にいること自体、夢なんじゃないかって。
照れ臭くて恥ずかしい。
「……啓太」
「えっ、何っ?」
不意に呼ばれてはっと我に返る。
「…そんなに見つめられると運転に集中できないんだけど?」
「え…っ! 俺そんなに…」
見つめてなんか、いないわけでもなかったりして……。
「……ご、ごめん…つい」
「………」
長い沈黙の後、和希が深々とため息をついた。
「和…希…?」
何かいけないことしちゃったかな。
心配そうに見つめる啓太に和希が宣言する。
「次の信号が赤なら、キスするから」
「……え!?」
「青でも脇に停めて、キスするから」
「ちょ…っ」
それどっちでもキスするんじゃ…?
「ホントは今すぐシート倒したいとこだけど、百歩譲ってここではキスだけで我慢するから」
「え、えっ?」
うろたえる啓太を見て、ハンドルを握ったまま大人の男の顔で和希が笑った。
「俺に安全運転してほしいなら誘惑するの禁止」
「ゆっ、誘惑なんて…っ」
「してるんです…」
「……」
否定する前に言われてしまったらどうすればいいのか途方に暮れる。
「まあどちらにせよ…もう手遅れだし」
「…え…?」
「早く帰らなきゃ…な」
呟きと同時に上がるスピード。
シートベルトがやけにきつく、締め付けてくるのは錯覚だろうか。
まずは、キス。
逃げられない。
…逃げる気もないけれど。
「……あ」
前方に信号機。
色は……。
☆どっちにしろキスの刑に処されます(笑)
ちなみにそのあとはお部屋で押し倒しの刑です。

PR