ぴぱるさんとの合同和啓メイド企画サイト
『my sweet maid』にて元メイド長
(現在は自主左遷ということで雑用メイドに降格。涙)の管理人が連載していた小説(『my sweet maid』)の続きです。
act.0 La Vie En Rose
act.1 Forbidden fruit is sweetest. 1 / 2 / 3↑上記、前章部分はサイトを参照してください。
(さすがに長くて面倒だったのでコピペしませんでした。ご容赦を…orz)act.2(2-1、1の途中。汗)は open から。
…にしても…
最終更新(act.1-3)が「2008.6.13」って見て、我ながらくらっと眩暈が…(--;
大変永らくお待たせして申し訳ない。。。<(_ _)>

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act.2 Gather ye rosebuds while ye may.
1
『俺の名前は…』
『遠藤和希』
『俺のことは、和希でいいよ』
「和希、か…」
鈴菱の広大な敷地、中央に位置するこれまた馬鹿デカイ屋敷の入口を、一人箒で掃いていた啓太は、昨日の出来事を思い出していた。
(すごくいい奴だったよなあ。初対面なのに親切で。俺とあんまり歳も離れてなさそうだし…)
――いい友達になれそう。
そんな嬉しい予感に、知らず啓太の頬が緩む。
(成り行きでメイドになっちゃって不安だったけど…ここの人、みんないい人ばっかりだし…よかったのかな?)
自分はここぞというときの運は強い、はずだから。
「啓太ー!」
お屋敷の入口の方向から、一台の赤いマウンテンバイクがしゃこしゃこ音を立ててやってきた。
「あ、俊介。おはよう!」
乗っているのは使用人仲間の滝俊介だ。
「おはようさん! 今日も庭掃除頑張っとんなー」
俊介は啓太より一つ上で、本来は父親の跡を継ぐべく修業中の庭師見習いなのだが、持ち前の運動神経と自転車技術を買われ、内外で請け負った荷の運送、篠宮に頼まれた食材の買い出し等様々な雑用を担当している自称『何でも屋(笑)』の先輩だ。
お調子者なのでよく篠宮に雷を落とされてはいるが、基本的に仕事は真面目にこなすし面倒見もよいので、屋敷の者達の信頼は厚い。
歳が近いこともあり啓太ともすぐに打ち解けた。
どうやら俊介にも、何かしら苦労した過去があるらしく、家庭の事情で急にメイドをやる羽目になった啓太を我がことのように気遣ってくれている。
「うん。俊介、マウンテンバイクってことは…今日は外へのご用?」
「当たりや。料理長さんから頼まれた食材の買出しと秘書さんに頼まれた手紙の投函と他にも…」
ひのふのみ、と言いながら用件を思い出し指を折る。今の啓太には何が何だかわからない仕事ばかりだ。
「うっわ、大変そう…。俺も早く仕事覚えて…すぐ手伝えるようになるから!」
「まあまあ、そんな慌てんでもえぇって…気持ちだけもらっとくさかいなー」
わははと快活に笑いながら俊介は先輩風を吹かせ啓太の頭をよしよしと撫でる。
「むー…」
「むくれんなや、啓太。ほーれリボン曲がっとるし」
「!」
指を差されてバッと胸元のリボンを見た瞬間。
「冗談や」
ニヤと笑う俊介に啓太が拳を振り上げ、ブンブン回した。
「……っ、俊介ぇ~!」
「堪忍、堪忍や啓太。グーで殴るのは止めやー!」
と、一通りじゃれあったところで、二人は笑い出す。学生時代のように何でもないバカみたいなやり取りが互いに楽しかった。
「さて、今日も仲良う啓太と遊んだし…そろそろ外回り行ってくるわ~」
「気をつけてな。あんまスピード出し過ぎるなよ?」
「任しとき~…っと、アカン。肝心なこと忘れるトコやった!」
マウンテンバイクを漕ぎ出そうとした俊介がUターンして戻ってくる。
「?」
「啓太に手紙預かっとったんやった」
「…手紙?」
マウンテンバイクに跨がったまま、肩から下げた茶色い鞄に右手を突っ込み、ごそごそと中から一通の白い封筒を取り出した。
「ほい!」
ぽん、と手渡される。
「確かに渡したで?」
「あ、ありがとう。…で、これって…」
誰から、と続けようとしたが、俊介はギュインと進行方向へと構えると瞬く間に点となっていった。
「ちょっ、俊介ー! これ一体誰から…って…もう見えないし…」
箒と白い封筒を手に啓太は途方に暮れる。
「ったく…俊介の奴…」
嘆息しながら、啓太は箒を側のベンチに立てかけ、封筒をひっくり返して裏表をざっと眺めた。
表には『伊藤啓太様』と、美しい筆跡で。
けれど裏に、差出人の名前はない。
「誰からだろう。ん…?」
よく見ると、珍しいものが目についた。
(これって…蝋?)
蝋封――シーリング。
封印に使われているのは鋼色の蝋と何かの刻印。
「うわあ、俺こんなの初めて見た…」
昔、家族みんなで見た洋画の中になら出てきたけれど実物を拝んだのは正真正銘初めてだ。
「…K…かな?」
刻印はアルファベットの大文字の筆記体『K』に見える。
少なくとも、これまで啓太の周りにはこんな洒落た手紙を寄越す友人はいなかった。
(西園寺さんあたりはこういうの使いそうだよなあ…七条さんは絶対メールだろうけど…)
このお屋敷に勤めはじめて知り合った人々の顔を思い浮かべ、一人勝手に想像してはうんうんと頷く。
「……」
ぺり、と恐る恐る封を切った。
二つに折られた白い便箋。
だが高級なのはパッと見、そして手触りでわかる。
少しだけ緊張した。
『拝啓 伊藤啓太様――』
美しく綴られた文字の行方を目で静かに辿る、と。
「!」
途中です…つか、まだ序盤だったり…アハハウフフ(;・∀・)PR